ブランクのある看護師のための看護技術とケアの復習【復職セミナー前に】

浣腸・摘便

便が直腸まで降りてきているのに自力で排便できない時に、
強制的、或いは人為的に排便させる方法を浣腸・摘便と言います。

 

浣腸は便秘を訴える患者さんに対して実施したり、
検査や手術のルーチンの前処置として実施するなど、
日常多く行われる処置の一つです。

 

ですが、適応や方法を誤り、急激な血圧の変動や結腸穿孔などの合併症を引き起こすことがあります。

 

ですから、浣腸や摘便は、便秘だからと言って安易に行ってはいけません。
便秘を予防する食事や水分補給をして便を軟らかくすることや、
適度な運動をするなど、できる限りのケアをして自然排便を促すことが大切です。
そして、浣腸や摘便を実施する時には、注意事項や合併症などのリスクを考慮してケアにあたることが重要です。

自然排便を促す

便秘だからと言って、すぐに浣腸や摘便を実施するのではなく、
なるべく自然排便を促したいものです。

 

自然排便とは、直腸の収縮力や腹圧、重力の働きなどにより自然に排便することです。

 

では、自然排便を促すための効果的な方法とはどのような方法でしょうか。

 

まず、便意を感じるのは、自律神経が排便反応により直腸が収縮したがっていると言うことですから、
患者さんが便意を訴えたらすぐにトイレに誘導します。

 

そして、座った状態でいきむことができるようにケアすることが大切です。

排便に導くアセスメントとケアについて

年齢を重ねると共に筋力が弱くなってきます。
すると、自然排便が難しくなりますし、寝た姿勢のままでは重力を使うことができず
腹圧も半分しか使うことが出来ません。
そのため、腸に便が残りやすくなります。

 

このような状況でも、適切な自然排便へと導くアセスメントとケアが大切です。

 

@アセスメント項目とは

 

便の性状や回数、色、量、におい、排便習慣、腸蠕動音の有無、既往歴、内服薬、食事内容、排便動作など

 

(便の性状について)

  1. コロコロ便:硬くコロコロの兎糞状の便、排便困難な便
  2. 硬い便:ソーセージ状で硬い便
  3. やや硬い便:ソーセージ状で表面にひび割れのある便
  4. 普通便:ソーセージ状・蛇のようなとぐろを巻く形で表面が滑らかで軟らかい
  5. やややわらかい便:はっきりとしたしわがあり、軟らかい半分固形状の便(簡単に排便できる)
  6. 泥状便:ふにゃふにゃで不定形の小片便、泥状の便、境界がほぐれている形
  7. 水様便:固形物を含まない液体状の便

 

A排便時の姿勢

 

自然排便を促すには、排便時の姿勢はとても大切です。

 

いきみやすく、腹圧がかかりやすい姿勢を保持することが必要です。
排便の基本姿勢は座位。
いきむ時には横隔膜を下げ直腸に向かって圧をかけると排便を促すことができます。
また、やや前かがみにすわり、前腿で身体を支えるように座ります。

 

ベッド上で行う場合は、ヘッドアップし、腹圧がかかりやすいようにし、
手すりがあり体幹が安定しやすい状態にすると良いでしょう。

 

 

B便秘の予防

 

・運動不足や生活の変化による便秘

 

運動不足や生活の変化によってストレスがたまると腸の蠕動運動が低下します。
また腹筋の力が衰えると十分ないきみができなくなり、排便が困難になります。
我慢してしまうと便意が消失してしまうことがあるため、
適度な運動を心がけ、便意を感じたらすぐにトイレに行くようにします。

 

適度な運動をすることはストレスを解消することにもなります。
無理の無い程度で、適切な運動を行うように指導します。

 

 

・食生活

 

便秘を予防するためには、食生活がとても大切です。

 

胃・結腸反射により、胃に食べ物が入ると腸が刺激されて排便が促されます。
不規則な食事ですと胃・結腸反射が起きず、腸が刺激されないため排便が促されなくなります。
また、水分が不足すると便が硬くなりますし、
食物繊維が少ない場合にも便の量が少なくなり、さらに硬くなるため便意を起こしにくくなります。
食事制限などがないのであれば、便秘対策に有効的な食品を積極的に摂る様に、患者さんに指導します。

 

Cマッサージや温罨法

 

腸のマッサージが便秘を予防します。

 

腹部を腸に沿ってマッサージをすると腸を刺激することができ、
便を直腸の方向に下ろす効果を期待することができます。

 

温罨法では、腰に温かいお湯で絞ったタオルを乗せてあげると
腸を刺激することができ、腸の蠕動運動が促進され、排便や排ガスを促すことができます。

便秘対策に有効的な食品

・水溶性食物繊維(海藻類、コンニャク、オクラ、果物)
水分を吸収し便を軟らかくし、腸内の脂肪や糖の吸収を抑制したり調節、
さらに病原菌の増殖を抑える働きをします。

 

・不溶性食物繊維(玄米、豆類、ごぼう、たけのこ、キノコ類、イモ類、ブラウン)
水分を吸着して保持し、腸内容物の体積を増加させ、超の運動を促進させる働きをします。

 

・発酵食品(納豆、チーズ、ヨーグルト、味噌、漬け物)
腸内の細菌叢を整えて排便機能を改善する働きをします。

 

・その他の食品(たまねぎ、にんにく、ねぎ、オリーブオイル)
これらの食品に含まれる化学物質が、腸の蠕動運動を促進する働きをします。

浣腸を行ってはいけない場合

浣腸は急激に血圧を下げてしまいます。
ですから、浣腸を行ってはいけない病気があります。

 

浣腸を行ってはいけない患者さんとは、
頭蓋内圧亢進症状、重篤な心疾患、高血圧の患者さんです。

 

また、術後の患者さんの摘便も、注意深く行うことが大切です。

 

浣腸の目的と禁忌について
@ 浣腸の目的

 

浣腸は、便秘や手術・検査の前処置として行われます。

 

浣腸には、グリセリン浣腸と高圧浣腸があります。

 

直腸内の宿便やたまったガスを排除したい時に行われるのがグリセリン浣腸で、
肛門括約筋機能不全による便秘、便失禁や造影時や薬剤の注入、
手術や検査の前処置として行われるのが高圧浣腸です。

 

A 禁忌

 

浣腸は急激に血圧を下げる処置です。
ですから、頭蓋内圧亢進症状のある患者さん、または予測される患者さん、
重篤な心疾患・動脈瘤、重症な高血圧症の患者さんには禁忌とされています。

 

また手技や腸管によって穿孔を起こすリスクもあります。

 

・腹腔内炎症や腸管穿孔がある患者さん、または予測される患者さんに対しては、
腸管からの漏出による腹膜炎を誘発したり、蠕動運動亢進作用による症状を増悪する危険性がありますし、
グリセリン吸収による溶血や腎不全を起こす危険性があるため浣腸は禁忌です。

 

・直腸や結腸など下部消化管術後の患者さんに対しては、
蠕動運動亢進作用による超過縫合部の難解の危険性があるため浣腸は禁忌です。

 

・全身衰弱の強い患者さんに対しては、
浣腸による強制排便によって衰弱状態を悪化させたりショックを引き起こす可能性があるため
浣腸は禁忌です。

 

・悪心や嘔吐、激しい腹痛などで急性腹症が疑われる患者さんや血圧変動が激しい患者さんに対しては、
症状の悪化の危険性があるため浣腸は禁忌です。

 

 

また、高圧浣腸だけでなく、通常行うことが多いグリセリン浣腸でも
直腸穿孔をきたした症例報告もあります。

 

グリセリン浣腸を前屈位で行う場合、挿入角度や肛門部の観察ができないため、
カテーテルの長さがどのくらい入っているかが把握できません。
ですから、カテーテルを挿入しすぎてしまう可能性もあるので注意し、
患者さんに体位は左側臥位をとってもらい、5〜6cm挿入するようにします。

摘便について

摘便の目的
肛門付近にある便の塊を取り除くこと。

直腸粘膜を刺激して排便反射を促すこと。

摘便を行う際の注意点
下部消化管出血や肛門・直腸の術後、

泌尿器・会陰部の術後患者さんに対して行う時には特に注意が必要です。

 

摘便を実施する時には、直腸粘膜を傷つけないように、
愛護的に行います。