ブランクのある看護師のための看護技術とケアの復習【復職セミナー前に】

創傷について

創傷とは「傷」のことです。
創傷が治癒に至るまでどのような過程を辿るのか、
消毒の必要性や術後のシャワー浴・温泉浴が可能なのかどうか、
創部からの出血がみられる時、水泡ができたとき・・・。
ひとくちに「創傷ケア=傷の手当」と言っても様々です。

  • 褥瘡とは、床ずれこことで、長期間ベッドに寝ている患者さんや車椅子を利用している患者さんに多くみられるものです。 皮膚が薄く、骨と皮膚の間に加重がかかりやすい仙骨や坐骨によく発症します。

  • 下肢潰瘍とは、動脈硬化によって下肢への血流の流れが悪くなり下肢に潰瘍ができるもので、ひどい場合は壊死にまで発展します。
創のケアには、創傷の治癒過程や治癒形態に基づいたケアが必要です。

創傷の治癒経過と消毒の必要性について

傷には消毒!と言うイメージですが、
消毒薬は創傷治療の過程を考慮して使用する必要があります。

 

創傷には、手術創のような急性創傷と、褥瘡や下肢潰瘍のよう慢性創傷があります。

 

急性創傷と慢性創傷では治療形態が異なりますし、
それぞれの創(傷)の汚染状態も異なります。
そして、繁殖期に消毒薬を使用すると、
細胞活性に影響を与えると考えられているため、
消毒薬は創傷治癒過程を考慮して用いる必要があります。

創傷治癒過

@創傷の治癒形態
創傷治癒形態には、「一次治癒」、「二次治癒」、「三次治癒」があります。

そして、創傷治癒過程に必要とする日数も異なります。

 

・一次治癒
受傷直後に縫合して治癒させます(感染がない外科手術創など)。

 

・二次治癒
開放創のまま肉芽増殖と上皮化を待って瘢痕治癒させます(組織の欠損が大きく、
創を縫合することが難しい場合、感染が予測される場合)。
そして、二次治癒では炎症期が長く続くので、「前期」と「後期」に分けて考えます。

 

・三次治癒
一定期間開放創として処置をし、創が清浄化した後縫合して治癒させます(感染創)。

A創傷の治癒過程
創傷治癒過程には、「炎症期」、「増殖期」、「成熟期」があります。

そして、炎症期の中には、損傷した部位に血小板が凝集する血液凝固期があり、
これは損傷直後に限ります。

 

・炎症期
受傷直後から血液凝固期となります。
炎症細胞の働きにより、細胞の遊走や血小板による止血作用、
生理活性物質の分泌が行われます。
(リンパ球や血小板、好中球などにより細菌や異物が除去され、
マクロファージから細胞増殖因子が放出され増殖期へ移行します。)
およそ48時間で上皮化が完了します。

 

・増殖期
繊維芽細胞の増殖が促され、血管新生が促進されて肉芽組織が形成されます。
増殖期は3週間ほど続きます。

 

・成熟期
コラーゲンが架橋され、創傷の強度が増します。
肉芽組織がコラーゲン繊維や弾性繊維に置き変わります。
そして、表皮細胞が増殖し、創傷面を覆う上皮化が起きます。
成熟期は1年以上続きます。
このとき、コラーゲン産生が過剰に生じた場合真性ケロイドになります。

バクテリアルバランス

細菌が与える生体への負担(bacterial burden)と
生体抵抗性のバランスによって感染が成立するという考え方を
バクテリアルバランス(bacterial balance)といいます。
そして、宿主と細菌には密接な関係があり、
細菌と創傷は共生関係にあること、
創傷の汚染状態は、汚染、保菌、クリティカルコロナイゼーション、
感染に分類することができるというのが
バクテリルバランスの概念です。

 

汚染(wound contaminaton)
創傷に細菌がしますがが、菌の繁殖はない状態を言います。
保菌(wound colonization)
創傷で細菌が繁殖していますが、生体や創傷には影響を及ぼさない状態を言います。
クリティカルコロナイゼーション(critical colonization)
細菌数が増加し、創傷の治療に影響を及ぼす状態を言います。
感染(wound infection)
細菌が組織に侵入して増殖し、宿主に影響を与え、創傷治癒を阻害する状態を言います。

消毒は必要か

消毒は、創の治癒過程や形態に基づいて行われなければなりません。

 

ヨウ素は、免疫細胞を活性化させ、過剰ナプロテアーゼを抑制するなどの有効性があるため、
創傷の消毒にはポピドンヨードが使われています。
ポピドンヨードには、広い抗微生物スペクトルがあるため、
手術部位の皮膚や皮膚の創傷部位をはじめ、粘膜にも使用することができるなど、
ウィルスや抗酸菌にも有効な消毒薬として用いられます。

 

ですが、急性創傷患者さんに1%ポピドンヨードと生理食塩液による創洗浄をして比較したところ、
統計学上的には感染率に有意な差は無かったという報告がありますし、
ポピドンヨードは蛋白や血液などの有機物と接触することで消毒効果は失われます。
さらに、消毒液は好中球や上皮細胞、ケラチノサイトなどの
創傷治癒に必要な因子に有害とされています。

 

つまり、繁殖期に消毒薬を使用すると、細胞活性に影響を与えてしまいます。

慢性創傷の消毒

通常、褥瘡部は洗浄のみで十分で、消毒の必要はないと言われています。

 

明らかに創部に感染が見られる場合や、
滲出液や膿苔が多いときには洗浄前に消毒を行うことがあります。

 

ポピドンヨードについては、創傷治癒阻害作用に関する論文と、
それらの質の高さの関係を検討したシステマティックレビューによると、
褥瘡の有無と衝動による治癒遅延の関係を示すデータは乏しいものがあります。
つまり、ポピドンヨードが褥瘡の治癒を阻害するという根拠は十分ではありません。

 

1994年のAHCPRガイドライン(米国保健医療政策研究局)では、
「感染性褥瘡でっても洗浄剤や消毒薬は必要なく、生理食塩水による洗浄のみで十分である」としていました。

 

ですが、1999年のEPUAP(ヨーロッパ褥瘡諮問委員会)ガイドラインでは、
明らかな感染がある場合、
創部の滲出液や膿苔が異常に多いときには消毒薬の使用が容認されるようになりました。

 

このようなことから、消毒は
「創傷治癒過程を考慮して消毒剤を使用すること」が推奨されています。

クロルヘキシジンの注意点

クロルヘキシジンは、人体粘膜へ使用すると、アナフィラキシーショックを起こす有害事象があります。
ですから、口腔以外の粘膜への使用は禁忌となっています。

 

アナフィラキシーショックとは、急性アレルギー反応のひとつで、
じんましんが出たり、皮膚が赤くなるなどの皮膚症状が出ます。
ときに、呼吸困難やめまい、意識障害の症状を伴うこともあり、
血圧低下などの血液循環異常をおこし、
生命を脅かすようなショック状態になることがあります。

手術創と消毒

CDC(米国疾病予防管理センター)の「SSI(手術部位感染)防止に関する推奨」によると、
皮膚切開前の消毒薬の使用は、ポピドンヨード、アルコール含有製剤、クロルヘキシジンなどが推奨されています。

 

手術後の消毒薬の使用についての言及はありませんが、
「SSI防止に関する推奨」では、上皮化の完了が48時間であることから、
一期的に閉鎖した切開創は術後24〜48時間は滅菌ドレッシング剤で保護するとしています。
そして、滅菌ドレッシング剤で保護している期間の消毒は不要です。
つまり、一次治癒する創傷に対しての術後の消毒は不要です。

 

ですが、SSI或いはSSIと判定されない離開創においても、
創傷治癒が遅延することがあります。
この遅延した離開創をドレッシング剤で密閉していると
細菌繁殖の温床となり、クリティカルコロナイゼーションの状態となって創傷治癒が遅延します。

 

ですから、このような場合には、創傷を治癒に向かわせるための抗菌薬を使用して治療します。

 

二次治癒、或いは三次治癒する創傷には、
消毒薬や抗菌薬(カデキソマーヨウ素、銀含ドレッシング剤など)を必要とする場合もあります。
洗浄液と消毒薬、創を湿潤環境に保つゲルをセットした「Prontosan」が米国では使用されています。

 

このようなことから、消毒薬や抗菌薬については、
宿主と細菌のバランスや、創傷の治癒過程をアセスメントして、
二次治癒、或いは三次治癒の形態をとる創傷の炎症期に使用することを推奨しています。